中京海運株式会社

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コラム
2023.09.15

ネット通販(EC)により海外の商品がもっと身近な存在に・・・
税関事務管理人とは?

以前は海外旅行先のお土産屋さんで「これはあきらかにニセモノだから騙されて買わされないように気を付けよう」「これは日本に売っていないし、しかも安いから買おう」という感じで旅行者は自ら判断して買っていましたが、近年は新型コロナウイルス禍で海外旅行に行けず、インターネット通販(EC)の利用が広がり世界各国の欲しいモノがネット上で簡単に買えるようになりました。

海外のネット通販を利用しても簡単にモノが家に届きますので輸入しているという感覚を忘れがちですが、実際に輸入されたモノが家に届いています。

今では、販売者は自ら会社の設立や商品を販売する店舗を持たなくても、Amazon・楽天・Yahoo!ショッピングなどのECプラットフォーム事業者が既に構築したECサイト(「買い物かご(カート)機能」「受発注、在庫管理機能」「決済機能」などの機能が揃ったネットショップ(ECプラットフォームの種類で言うとECモール))のサービスを利用して商品の販売ができたり、販売者が自らECサイト(ネットショップ)を開設して商品を販売することもできます。
また商品を保管、梱包する倉庫がなくても、Amazonや楽天などが展開するフルフィルメントサービス(FS)を利用すれば、その事業者が提供する営業倉庫で販売者の商品を預かり、販売者に代わって保管や受注後の梱包、出荷、配送、代金の回収まで行ってくれます。


ここからが今回のコラムの本題になりますが、海外ネット通販(越境EC)の利用も拡大しており、小口の輸入貨物〔通販貨物〕が急増しているため、税関も「ニセモノが紛れていないか?」「正しい価格で輸入申告をしているか?」「ほんとうに日本に輸入者が存在しているのか?」「輸入代行者がいるのではないか?」など、書類審査や税関検査などに時間をかけて適正な申告や不正薬物や知的財産侵害物品の密輸などの水際取締りの強化をしています。

海外の販売者(海外居住者)が日本のECサイトを利用して日本で商品を販売する場合、日本の購入者(買い手)がいないにも関わらず、とりあえず売れるかどうか分からない商品を日本へ輸入して、フルフィルメントサービス(FS)事業者が提供する営業倉庫で保管しておいて、日本の消費者に販売するような〔FS利用貨物〕も増えてきました。
輸入者は海外に居るため、自らの代わりに税関手続きを代行してもらう税関事務管理人(ACP)を定め、税関に届け出をすることで非居住輸入者として輸入することができます。

税関事務管理人は、日本に住所を有してさえいれば誰でもなることができ、税関への輸出入申告手続、検査の立会い、関税等の納付、税関が発する書類や還付金の受領等を非居住輸入者(日本に居住しない者)の代理で行います。
ただ非居住輸入者が法的な責任が取れない商品(取り扱えない輸入商品としては、例えば「食品衛生法」に係る食品、食器など、「薬機法」に係る薬品、化粧品など)は税関事務管理人も取り扱うことができません。

最近は非居住者である輸入者が、税関事務管理人を定めず(定めたとしても勝手に事後調査時までに解任していたり)取引の実態を把握していない国内居住者の知り合いに名義のみ貸してもらって輸入代行を依頼したり、国内居住者の名義を勝手に使用する「なりすまし」による不適切な輸入申告をしたり、輸入時点ではまだ売買が成立していない(国内で売れていない)商品のため、取引価格が存在していない貨物(無償貨物などのような「輸入取引によらない輸入貨物」)に該当するため、関税定率法の規定により輸入申告価格を計算しなければなりませんが、不当に低い価格で輸入申告し関税等をほ脱する問題が増えてきています。

そのような〔フルフィルメントサービス(FS)利用貨物〕問題への対応を含めて、2023年10月1日から輸入申告時に記載を求めている「貨物を輸入しようとする者の住所及び氏名」が関税法施行令上の輸入申告項目に追加することで、輸入取引の荷受人や国内での処分権限を有する者などを「輸入者」として確実に申告させるために、FS利用貨物を販売する非居住者が輸入申告者となり、今まで単に税関手続きの依頼を受けて輸入代行をしていた者は輸入申告者にはなれませんので、非居住者は必ず「税関事務管理人」を定めて税関へ届け出て輸入する必要があります。

それに併せて税関事務管理人の届出項目に「届出者と税関事務管理人との関係」等が追加されましたので、税関事務管理人との委任契約関係書類を添付しなければなりません。
また税関長が非居住者に税関事務管理人の選定・届け出などを要請し、要請に応じない場合は税関長が非居住者の一定の国内関連者を税関事務管理人として指定することを可能とすることで、指定された税関事務管理人を通じて税関が非居住者へ連絡できるようにして書類審査や事後調査の実効性を高めます。

従って2023年10月1日からは、「輸入者」を偽って輸入した場合は、虚偽申告輸入罪の対象となります。

2025年10月12日からはNACCSの更改に合わせて「通販貨物に該当するか否か」「ECプラットフォームの名称」「国内配送先」を輸入申告項目に追加することで、税関は通販貨物やFS利用貨物を申告情報から特定して書類審査、検査を更に強化する予定です。
例えば、国内配送先が物流拠点である「Amazonフルフィルメントセンター(FC)」などであれば、その輸入貨物は 「フルフィルメントサービス(FS)利用貨物」に該当するのではないかと判断したりします。

当社もEC貨物の輸入申告で以下のような経験があります。
・フルフィルメントサービス(FS)利用貨物の輸入申告価格(課税価格)の決定までに時間を要した
・ECプラットフォーム(自社ECサイトで販売する)事業者が輸入事後調査の結果、申告内容に誤りが発覚して修正申告を行い不足税額等を納付した
また隠蔽又は仮装により納税申告を行わない(誤った納税申告を行った)場合に課される「重加算税」を納付した
・ECモールサービスを利用する貨物が税関検査により「意匠権を侵害する貨物」と判断され、滅却した

▼税関立会いのもと「意匠権を侵害する貨物(送風機)」を滅却

このような物流事情を踏まえて、当社は新入社員研修も兼ねて令和5年5月24日~25日に名古屋税関にて見学を行い税関業務についての説明を受け、展示物品の解説を通じて不正薬物の密輸手口や知的財産侵害物品等について勉強しました。(税関HP参照)

今後は更にEC事業が拡大していきますので、関税法違反を防ぐためにもEC事業者、通関業者は輸出入貨物の物流と商流を把握(理解)し、注意しなければなりません。

このようにEC関連商品などの取り扱いが増加していく中で、2024年問題(トラックドライバ-の働き方改革など)も重なり物流サービスの保管機能を担う倉庫業の需要が非常に高まってきています。

輸入申告項目・税関事務管理人制度の見直しについて
輸入申告者の意義の明確化
日本に居住しない者が税関手続を行う場合の手続
輸入取引によらない輸入貨物についての課税価格の決定方法について
課税価格の計算方法
関税評価用語等解説
事後調査等
令和3事務年度の関税等の申告に係る輸入事後調査の結果 : 財務省
帳簿書類の保存
知的財産権について
令和5年上半期の税関における知的財産侵害物品の差止状況

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